2018 FIFA W杯 Group C ペルー共和国 vs デンマーク王国 試合後感想
巧さのペルーと高さのデンマーク。
ペルーはいかにデンマークの高さを回避するか、デンマークはいかにペルーの中盤を回避するか、すごく鮮明な戦術合戦になりそうです。
ぺルーは2トップではなく、カリージョをサイドに配してきましたね。
ルイディアスもゲレーロも使ってきませんでした。
中盤の構成力に自信があると思うので、なるべきボールをキープしたいところです。
3月のテストマッチでは、クロアチア、アイスランドに連勝するなど調子を上げています。
一方デンマークは、最終ラインに不安を抱えます。
レギュラーのドュルミシ、ビェランを招集できませんでした。
とはいえシステムは完成しています。
攻撃時は右SBを上げてアンバランスな3-2-3-2になります。
守備時は4-4-2、ポジティブ・トランジッション(守➡攻)の時には4-3-3になります。
左サイドのシストが守備時に左サイドのスペースを埋めることと、攻撃時にカウンターの起点になることが必須になります。
また中央で全体をコントロールするエリクセンが、攻守に獅子奮迅の活躍をすることが勝利するための大前提になってきます。
~前半開始~
ペルーは左コーナーからは左足で、右コーナーからは右足で入れることで、デンマークの最終ラインがペナルティエリアの奥深くに吸収されて、がら空きになるバイタルエリアに、意図的に放り込んでました。
加えて、最初はミドルシュートを多用しました。
WGのドリブルも、深くえぐってから、マイナスに入れるなど、デンマークの高さ対策は随分工夫していました。
また、デンマークの高さ対策として、両SBの攻撃参加の頻度を上げるのも効果的なようです。
全体の攻撃時間を増やすことに成功しています。
前半15分のプレイにみられるように、カウンターも機能しています。
それ以外のエリアでは、速いパススピードとそれを連続で繰り返すこと、そしてトランジッション時のリアクションを速くしていました。
それでも、急いでいるだけのチームではなく、南米のチームらしく緩急で翻弄していました。
また何度か繰り出された、ヨトュンのロングパスの精度が素晴らしいです。
ファルファンと息が合わないようなら、ルイディアスとゲレーロがベンチで待っています。
しかし、前半27分のファルファンのシュートは惜しかったですね。
カリージョからのスルーパスでした。
この二人はタイミングが合うようなので、代えにくいですね。
ひとつひとつのプレーのレベルはともかく、チーム戦術としてあまり進化が見られないのが気になりますが、昔の強い南米のチームという印象です。
一方デンマークは、フィジカルコンタクトの場面では優位に立っていましたが、勝ちパターンは披露できませんでした。
エリクセンのプレースキックも不安定で、不安が残りましたが、ヨルゲンセンとポウルセンのツインタワーは局所で利いていました。
前半35分、負傷したクヴィストがシェ―ネに代わりました。
そのシェ―ネのミドルシュートもあり、シストも得意のドリブルでCKを得ていたりと、個々人の良いところは見えたので、後半に期待したいです。
一方ペルーは、前半44分にクエバが得たPKを、彼自ら蹴りましたが、外してしまいま
した。
その前のパスといい、ドリブルの切り返しもキレがあったので、またチャンスが来ると思います。
引きずらないようにしてほしいです。
~後半開始~
しっかり守っていますが、攻撃面では相変わらず、デンマークは噛み合わないままです。
最終的には、FWの、受け手の感覚に出し手が合わせるしかないと思います。
また、相手にポゼッションされているから、というのは理由にならないと思います。
アルゼンチンに攻められ続けた昨日のアイスランドには、一体感を感じられたのです。
そもそも、後半は体力も尽きてくるので、技術勝負になりがちです。
さらにズレが生じてくると思うので、ペルーに流れが来るんじゃないかと感じていました。
しかし、ペルーは最終ラインの守備の乱れが目立ってきました。
ラインコントロールだけでなく、ボランチとの距離も空きすぎています。
とはいえ、後半11分のように決定機を逸してしまうのは良くないです。
完全にオフサイドでしたが、最後のフローレスにはフィニッシュで終わって欲しかったです。
といっていたら、後半14分、デンマークが得点しました。
カウンターから、ポウルセンの得点です。
直後の後半15分のクエバのパスもエリクセンのそれと同じ精度のものでしたが、フローレスのシュートは、シュマイケルに止められました。
彼は前半も、素晴らしいシュートストップを見せています。
後半17分、ついにゲレーロの投入です。
フローレスとの交代になりました。
後半21分、シストに代えて、ブレイスウェイトの投入です。
あとは守備を固めるだけでいいのですが、プレースキックの得意な彼が入りました。
後半23分、ゴールから30m程度やや左寄りの位置からのFKで、ヨトュンのキックから、ファーにいるロドリゲスの折り返せたのですが、あと一歩詰めることが出来ませんでした。
後半25分にも、カリージョの縦への突破から良いクロスが入ったのですが、右サイドの守備に戻っていたポウルセンにクリアされました。
ポウルセンが守備に参加し、ブレイスウェイトが相手の最終ラインを引っ張る役割分担のようです。
後半33分、ゲレーロのヒールキックは惜しくも入りませんでした。
最大のチャンスだったと思います。
後半38分、またもやカリージョの縦への突破から、PKの立ち位置に下がったファルファンにミドルシュートを撃たれましたが、またもやシュマイケルに止められました。
~試合終了~
結果1-0で、デンマークが勝利しました。
得点したポウルセンが見せたのは、まるでライプチヒRBのような、切り替えの速さとポジショニングの良さです。
トランジッション時の対応が致命的な結果を生む、この10年でフットボールの大きく進化した部分が、色濃く出ました。
ペルーは用意したシナリオ通りに進めたにもかかわらず、望んだ結果は得られませんでした。
まさにフットボールの進化に取り残されたツケを払わされたようでした。
試合を支配することはできましたし、自分たちより相手のGKの方が、間違いなく忙しかったと思います。
ガラパゴス化で得られるものもあるのですが、まだまだ世界で勝つためには、才能ある選手を、最前線である欧州に送り続けなければならないのでしょう。
また、多くの若手が躍動しましたが、デンマークの期待の新星、ピオネ・シストは周囲の期待に応えたとは言えません。
その才能を発揮するのは、2戦目以降に持ち越しになりました。