2018 FIFA W杯 Group B イラン・イスラム共和国 vs スペイン王国 試合後感想
イランがスペインより優位に立つ瞬間が来るとは、思いもしませんでした。
少しでも長くこの時間が続けばと、思います。
チェシミが怪我してしまったので、ホセイニがスタメンです。
彼は今日誕生日です。引き分けで十分なのですが、ぜひ勝って祝ってほしいですね。
キャプテンのショジャエイも、初戦の怪我で控えに回りました。
彼の代わりに出るのが、タレミです。
ショジャエイがボランチの仕事もできるほど守備的なのに対して、タレミはイランのイブラヒモビッチともいわれる、アクロバティックで攻撃的なテクニシャンです。
ナインゴランとイブラの違いといえば、分かりやすいかと思います。
スペイン戦なので、ナインゴランの運動量が欲しかったですが、イブラの高さを押し付ける戦い方でも、悪くないです。
またエースのアズムンの所属クラブは、ルビン・カザンです。
カザンで行われるこの試合、ホームスタジアムでプレーできるのです。
ロナウドと同じように守備はサボってもいいので、是非攻撃で爆発してほしいですね。
一方、スペインは、カルバハルが帰ってきました。
ナチョは初戦の活躍ぶりでは、CBの控え以外に仕事は無さそうです。
攻撃面では、ジエゴ・コスタがレギュラーになってしまいそうですね。
なぜかみんなが憧れますが、そもそもパスサッカーのみで、結果を出すのはほぼ不可能です。
2008~2012年のスペイン代表やペップ時代のバルサは、奇跡的な事象であり、もう見られることは無いと思います。
それでも、パスサッカーで当時のレベルに迫るには、違った形になりますが、イアゴ・アスパスを1トップに据え、連携を究極まで高めるしかないと思います。
~前半開始~
ブスケッツはスペイン戦ですでに1枚もらっていることを、忘れてはいけません。
慎重にファウルしてほしいです。
難しいようなら、今後はダブルボランチが軸になるかもしれません。
ぶっちゃけ、スペインの中盤は、イニエスタとシルバ、ブスケッツの3人でパスサッカーが成立しています。
この3人の内、だれかがいなくなったら、スペインはアイデンティティを失います。
そして、イニエスタは後半15分過ぎには、走れなくなってきます。
ということは、そこまで逃げ切れれば、イランの勝ちが見えてくると思います。
前半10分も過ぎて、早くも、スペインはパワープレイを繰り出すチームになっていました。
ストライカーをジエゴ・コスタにしたので、合理的ではありますが、これでいいのでしょうか。
勝ち点を取るのが、最重要ではあります。
しかし、このチームの最終目標が優勝なら、チームの完成度を高める必要があります。
どこが相手でも倒せる戦い方を、貫くべきです。
中盤の三人がいるうちは、パスサッカーを貫き、誰かが欠けたら、ジエゴ・コスタをフル活用すればいいと思います。
前半21分、スペインがFKを得たのですが、なぜかセルヒオ・ラモスが蹴りました。
ゴールから40メートル以上離れていたとはいえ正面だったので、ミドルシューターがいないならいないで、工夫する余地はあったと思います。
イランはよく耐えきりました。
ただ、かなり体力を使ってしまいました。
引きすぎるのも危険なので、悪くないバランスだったとは思います。
とはいえ、レザイアンもアズムンもカードをもらわなくて、イランは助かりましたね。
タレミを前線の起点にして、イラン特有の堅い守備と、人数をかけた攻めも実現できていました。
イニエスタが動けなくなるのが先か、イランが動けなくなるのが先か、後半が勝負です。
~後半開始~
スペインは、後半開始後いきなりロングボールです。
パスサッカーはどこへやら、ジエゴ・コスタの調子と心中するつもりなのでしょうか。
HT後最初のプレイがこれで、選手たちは納得しているのか疑問です。
一方、後半7分のイランのセットプレイには期待が持てました。
アミリの鋭いロングスローに、アンサリファルドのミドルでした。
今後もこの飛び道具は、使えると思います。
ジャハンバクシュやタレミ、ショジャエイも欠かせないのですが、アミリのロングスローまで装備しているイランは、間違いなくアジア最強の攻撃陣です。
この試合、何としても勝ち点を獲得して欲しいです。
後半9分、ついに試合が動きました。
スペインが得点です。
イニエスタの絶妙なトラップ&スルーパスと、ジエゴ・コスタの素晴らしいターンから生まれたシュートです。
これは実にスペインらしい、美しいゴールでした。
ジエゴ・コスタは高さだけでなく、こういった華麗なプレイも得意としています。
チェルシー時代よりも、アトレティコに所属していた時の方が、見せていた印象があります。
後半14分、FKからタレミがカルバハルと競り合っていました。
イランは2列目と1トップは全員サイズがあるので、スペインの両SBに当てるのは正解です。
ほとんどの国が、スペイン戦ではセットプレイで優位に立てるのですが、その機会を作ることがなかなか出来ません。
しかし、スペインの運動量が落ちてきたことと、イランのデュエルの強さ、2列目のドリブルの鋭さでセットプレイを得ることが出来ています。
チャンスが出てきました。
後半17分、オフサイドで取り消されてしまいましたが、イランがセットプレイでゴール内にシュートを撃てました。
同点に追いつけると思います。
もう少しです。
後半24分、ハジサフィに代えてモハマディが入りました。
怪我による交代です。
後半26分、イニエスタに代えてコケの投入です。
スペインは逃げ切ることが出来るでしょうか。
後半29分、5大リーグで初めてアジア人で得点王になった、ジャハンバクシュの投入です。
後半35分、ルーカス・バスケスに代えて、今大会初出場のアセンシオの投入です。
ルーカス・バスケスは所属クラブではSBをやらされることもあり、サイドでの守備は充分にこなしていました。
アセンシオは素晴らしいクロスはあるのですが、サイドでの守備力は並です。
アスピリクエタの方が良かったのではないでしょうか。
時節出場停止です。
地味につらいですね。
また、アミリがピケから股抜きをしたシーンは、今後しばらく使われるでしょう。
アジアと世界との差が、確実に縮まった瞬間です。
後半41分、そのアミリに代えて、得点力のあるゴッドスの投入です。
イランのどうにかして追いつきたい気持ちの表れですが、連携を築き切れていないので、正直難しいと思います。
こちらも、ちぐはぐですね。
スペインは、逃げ切ることはできても、追加点は見込めない状況です。
現場は混乱するのではないでしょうか。
~試合終了~
結果、スペインが1-0で勝利しました。
そういえば、試合前の審判も交えた、スタメン同士の握手の際、セルヒオ・ラモスの握手がイランの選手に対して強すぎるように感じました。
ものすごく声・態度のでかい人と接すると感じる、恫喝される感じです。
後半5分過ぎの、バスケスの相手キーパーに対する態度も横柄に感じました。
スペイン代表はいつの間にか、そういったレアル・マドリ―らしさが幅を利かせてきているようです。
強者はより有利な笛を吹かれがちです。
勝っているので、色眼鏡で見てもらえるからです。
大衆も味方にします。
そんな時、自分たちの心に公正さを持って、自ら襟を正せるか、より美しさを求めて、己の高みを目指せるか。
スポーツの世界はビジネスの世界でもあるので、謙遜は油断同様禁物です。
相手が弱みを見せれば、叩くのは当然です。
しかし加虐的な接し方になる必要はないのです。戦争じゃない。
ルール上問題ない範囲ですし、構わないのですが、スペインには高みを目指してもらいたかった。
日本でも実態より高く評価される組織、集団が存在するので、偉そうなことは言えませんが、そういったレアル・マドリーらしさが勝負を分けたように感じました。
シャビがいたころの、美しく品のあるサッカーが懐かしいです。
胸を張って、誰に恥じることもなく、スペインのサッカーが好きだといえました。
美しい思い出は、郷愁の中に。