Group Bポルトガル共和国 vs スペイン王国 展望
今大会初の優勝候補同士の対決です。
今まで片方のチーム紹介のみで、ろくに戦術分析をしていないので、既に存在意義が問われているかもしれないこのブログですが、今回こそ頑張りたいと思います。
ただ、共に語り尽くされた感もある両国です。
そこで、一発勝負ならではの、細かいところを見ていきます。
ポルトガルの注目ポイントは、追い込まれた際につなげるのか、ということです。
両CBにロングフィードがないことから、普通対戦相手は、二人以外にプレスをかけて、この両CBに蹴らせます。
しかし、スペインはハイ・プレス、バックパス猛追型のチームです。
カウンターだけではなく、繋いで時間を潰せるのが、ポルトガルの強みなのですが、スペインはGKにすらプレスをかけてくるので、それすらさせてもらえない可能性があります。
ボランチを務める、ウィリアム・カルバーリョが両CBの間、リベロの位置に降りてくる動きが機能しないと、最初のビルドアップが機能不全に陥ります。
彼を囮にして、GKが前線に放り込んだり、中盤に放り込んでもいいので、何とかボールを持って前を向ける形をつくれないと、完全にポゼッションされてしまいます。
ロナウドがいることで、ポルトガルのカウンターを一度も発動させまいと、スペインは一切の妥協無く、徹底的にやってくる可能性が高いです。
かつてスペインも前監督時代には、放り込みも戦術の一つとして許容されていました。
しかし今の監督は、パス回しにも閃きに頼らない、ガチガチの戦術オタクです。
成果を出してきたベテランが多いチームで、なんにでも介入するやり方が選手たちに受け入れられるかどうかは、緒戦にかかってくるでしょう。
ということで、スペインの注目ポイントは、監督についていき、チームとして一つになれるのか、ということです。
その監督ですが、今大会の予選や、U19欧州選手権、U21欧州選手権では成果を出しています。
しかし、選手たちももはや若造ではなく、みな自身のビッグクラブで結果を出したスーパースターになったのです。
1か月間の帯同で、何の摩擦もない集団はありえず、また健全とは言えないでしょう。
何の問題もなかったら、控え選手の活力、爆発力にも期待できません。
スペインがW杯、EUROで結果を出した時、監督は穏やかなおじいちゃんでした。
人格者から戦術家への変化が果たして成功するか、見ものです。
それは、スタメン選びにも表れてきます。
例えば、スペインのDF、アスピリクエタは右回転からの背走はもちろん、左回転からの背走も早い(大抵は個人差がある、股関節の柔らかさなどの理由により、どちらかが早くなる)ため両SBもこなせるフィジカルを持ち、戦術的インテリジェンスにあふれ読みも鋭いため、CBとしても非常に優れたDFです。
怪我も少なく、フル出場したシーズンも少なくありません。
アーリークロスの精度も高く、今シーズン、所属クラブでは、同僚のFWモラタに多くのアシスト送りました。
それだけでなく、ベンチにおいても腐らない性格でもあるため、これ以上のDFはいないといっても過言ではないと思います。
一方で、スペイン代表で同じポジションを争う、カルバハルは右SBのみをこなす選手です。
前を向いてのスピードであれば、オフザボール、オンザボール共に1対1のディフェンスは、アスピリクエタを凌ぐものがありますが、背走は苦手です。
サイズもより小さく、スペインリーグでプレイしているにもかかわらず、けがは多いです。
また、CBはできません。
一方で、攻撃力は高いものがあり、クロスの精度はアスピリクエタより、さらに高いです。
クイックネス、アジリティーともに高く、技巧的なドリブル突破もアスピリクエタにはない武器といえるでしょう。
しかしベンチ行きを拒む、自尊心の強さがあり、扱いが難しいと感じる監督もいるでしょう。
この二人を抱える今のスペインの監督は、現在のところカルバハルを使っています。
カウンターの鋭いポルトガル等、強豪相手にどちらを起用すべきかは、答えが出ている気もしますが、選手も人間です。
TVゲームのように、駒として扱うことはできないのですから、監督のマネジメント力に結果が左右されることにもなるかもしれません。
これまでの三試合は、お互い相手の手を窺いながら、ジャブを打ち合う展開だったのに対して、このゲームは互いに手の内を知り尽くしている故に、必殺技を繰り出しあうド派手な対戦になる気がします。
勝負所を見誤ったほうがやられてしまう、スリリングなものになるでしょう。