2018 FIFA W杯 Group A ロシア連邦 vs サウジアラビア王国 試合後感想
イグナシェビッチ!?4バック!?
開会式も穏便には済まなかった今大会ですが、スタメンもサプライズがありました。
カンボロフが負傷欠場した関係で、追加招集されたイグナシェビッチが、まさかのスタメン入りです。
彼はまだ、CSKAモスクワの選手です。
10年前は、ベレズスキ兄弟と共に本田選手の同僚だったので、覚えてらっしゃる方も多いかと思います。
ロシア代表は、若い選手も増え、随分様変わりしましたが、2008年の時と同じようにピッチ上でも驚かせてくれることを期待しています。
どうでもいいことですが、国家歌ってる時のジルコフの顔が、ものすごく疲れていそうでびっくりしました。
前日眠れなかったのでしょうか。
また、サウジにも是非、世界を驚かせてほしいです。
3大会ぶりの参戦となり、緊張もあるでしょう。
開幕戦ですし、相手は開催国です。
強烈なアウェーの中、難しい戦いになりますが、アジアの代表として恥ずかしくない戦いを期待しています。
出来ないことは、しなくていいです。
結果はともあれ、今できる最大限の力を発揮することです。
~前半開始~
初戦ということもあって、お互い動きが固いです。
特にサウジは判断も悪く、パスの球威、角度、基本的なボールコントロールまで浮ついた感じでした。
ロシアのフィジカル重視の球際の争いに呑まれ、得意の短いパスワークと人数をかけた攻めが、封じられています。
正直こんなレベルの低いチームだったか、この状態ではサウジのグループリーグ突破は難しいな、という印象を受けてしまいました。
攻撃では、ロシアの3CBの脇のスペースを使おうとしていたのですが、まさかの4バックだったので、攻撃に手詰まり感が生まれてしまったのも、事実です。
守備では、前半7分前後のオマル・ハウサウィのプレイは緩慢で、ロシアの選手たちに今攻撃するべきだと直感させる、きっかけになるようなプレーを繰り出してしまっていました。
一方ロシアも、不安が残る、急造のセンターラインです。
サウジが最終ラインにプレッシャーをかけてこないのをいいことに、いい加減なビルドアップでも、第一プレッシャーラインを超えることが出来てしまっています。
そんな折、前半12分に、得点が生まれます。
今大会最初の得点は、ロシアでした。
しかし、ガジンスキの得点時に、チェルシェソフ監督の顔色は優れませんでした。
それもそのはず、あまり早い時間帯に得点してしまうと、空気が緩みがちなので、あまり喜べないのです。
しかし、若手エースのゴロビンは、のびのびプレイしてますね。
その心臓の強さは、ビッグクラブ向きです。
アーセナルなど多くのクラブが、秋波を送るのも分かる気がします。
ずっとロシアの流れだったのですが、サウジにも逆転の時が訪れます。
とりわけ、前半20分のシャフラニのアーリークロスは、素晴らしかったです。
得点にこそなりませんでしたが、CKになりましたし、ここまで唯一可能性を感じました。
そもそも彼のドリブル突破からだったので、彼は単独で解決力を発揮したことになります。
彼は両SBをこなせますし、ドリブルにはセンスを感じます。
サウジ国内ではビッグクラブである、アル・ヒラルに所属しているのですが、まだ26歳、この大会を機に羽ばたいってほしい若者の1人です。
早くもジャゴエフが、負傷交代です。
彼も10年前にCSKAモスクワにいた一人で、活躍が期待されていました。
次戦以降に、持ち越しですね。
スコアが動いたことより、時間経過によるものなのか、少しずつ硬さが取れてきてくりだされた、前半30分のゾブニンのサイドチェンジ、同33分のスモロフのダブルタッチは、ロシアが調子に乗り出したな、という印象を与えました。
しかし出来ないことは、やるもんじゃないです。
それが逆にサウジの動きを良くしてしまったのですから。
慎重さを湛えていたピッチ上が、がぜん開放的になってきました。
少しずつサウジにも流れが来ていたのですが、追加点がロシアに生まれます。
ジャゴエフの怪我からチャンスを得た、チェリシェフが躍動しました。
ゴロビンのスピードとチェリシェフのゴール前の落ち着きが、結実しました。
チェリシェフに対しては、ブレイクが一人でよく抑えていたので、サウジにとってはややアンラッキーな失点です。
このプレーの少し前、オタイフが周囲に激しい気持ちをぶつけていました。
中々サイドで起点を作れていなかったこともありますが、おそらく一度もシュートを放っていないので、こんなことでは勝てない、全体をもっと押し上げてくれ、というようなことをチームメイトに要求していたのだと思います。
それがチームメイトに無理をさせ、失点につながってしまったのだと思います。
このあとサウジの選手たちは、消耗もあったのでしょうが、また動きが固くなってしまいました。
サウジは少なくても、2点取らなければなりません。
全員攻撃は、間違っていないと思います。
恐れずにパス&ゴーをしなければ、前線で局地的にも、数的優位はできません。
サウジにもまだ頑張ってほしい、出来るはず、というところで前半が終わりました。
~後半開始~
後半開始から、ゴロビンが飛ばしています。
おそらくロシアとしては、充分にリードしているので、もっとポゼッションしたいのだと思います。
しかし、ゴロビンはすぐ仕掛けてしまうので、トランジッションの激しいゲームになってしまう。
彼はボランチもできますが、攻撃的に2列目に置くのが、代表としては正解かもしれません。
今大会は、攻撃的なミランチュク兄弟やエロヒンではなく、守備的なガジンスキやゾブニンの出番が増えるかもしれません。
トップ下を務めていた、ファラジが左サイドに張り出してきました。
サウジは、彼と前半良い動きを見せたシャフラニのコンビネーションで崩すつもりのようです。
右に人数を掛けて、左でアイソレーションを作るのもいいかもしれません。
と言っていたら、後半10分、ブレイクのアーリークロスに飛び込んだサフラウィとジャシムが惜しかったです。
コンビネーションと見せかけて早めのアーリーに、ロシアは対応できていませんでした。
効果的な二択です。
チャンスが来ているのですが、中央からはうまくいっていません。
中盤の底を務めるオタイフは、サウジのブスケッツと言っていい選手なのですが、周囲の選手がポジショナルプレーが下手で、その力を活かしきれてないです。
GKのアキンフェエフのロングフィードが正確なので、あまり問題視されていませんが、オタイフは二人のCBの間かその脇に落ちる、リベロの仕事をした方が、安定して上質なボールを前線に運べると思います。
しかし後半18分、オタイフは代えられてしまいました。
点差があるのでFWの投入は致し方ないところですが、彼の不在によってバイタルエリアの守備が不安です。
後半26分、ロシアにさらに追加点が生まれました。
スモロフと交代で出場したジュバの得点です。
とどめに近い失点でしたが、直後にドーサリが惜しいミドルを放ちました。
強引に撃っていかないと、この試合だけでなく、グループ突破の可能性も無くなります。
残りの二試合に悪影響を与えないよう、積極性がなお一層必要です。
その後終了間際に、ロシアに素晴らしい4点目、芸術的な5点目もありました。
~試合終了~
今日のコンディションであれば、ロシアの勝利という結果は妥当だと思います。
しかし、5-0という結果には、審判の判定も大いに影響しました。
本日主審を務めたピタナさんは、中々ファウルも取らないしカードも出さない人なので、フィジカルに強みの無いチームには、大変厳しい審判です。
試合は円滑に進んだのですが、この脳筋寄りのジャッジは、結果的にものすごくロシア寄りになり、大量点差に繋がったことは、否定できないと思います。
これをFIFAがどのように評価するかが、大会の傾向を決めることになると強く感じました。